- 管渠更生工法
- 管渠改築工法
管渠更生工法について
近年、下水道施設の老朽化が進み、機能の低下や道路陥没の要因となっていることなどが問題となり、その維持管理・更新改築が重要視されるようになりました。
このような何らかの処置が必要な管渠の改築・補修をする場合、掘削せずに非開削で改築・補修する更生工法が活用されています。
このページに掲載の記事は、『管路更生の設計手法入門』を基に再構成しております。
詳しくは参照元の記事をご覧ください。
●管路更生の設計手法入門(一般社団法人 日本管路更生工法品質確保協会)
管渠更生工法の効果とメリット
更生工法の導入効果について㈶下水道新技術推進機構から発刊された「管きょ更生工法の品質管理 技術資料」では下記のとおり記載されている。
(1)管路の性能向上
a.耐荷能力の向上
更生工法により、老朽化し、耐荷能力が減少した既設管の耐荷能力を向上させることができる。また、既設管敷設当時よりも交通荷重が増加したり、土被りが増加したりした場合、それに応じた耐荷能力を向上させることもできる。
b.耐久性の向上
更生工法により、既設管の耐久性(耐摩耗性・防食性等)を向上させることができる。特に既設管がコンクリート系部材の場合、更生工法を行うことによりプラスチック系の材料で内面が被覆されることにより、耐摩耗性や防食性を大幅に向上させることができる。
c.流下能力の向上
更生工法により、既設管の流下能力を向上させることができる。特に更生後の管きょ断面が比較的大きく確保でき、しかも粗度係数が既設管よりも減少する場合、既設管より設計流量を増加させることができる場合もある。
d.水密性の向上
更生工法により、管体・継手部・取付管接合部等の内外水圧に対する水密性を向上させることができる。現在、既設管に漏水、もしくは浸入水がある場合でも、それらを遮断させることができる。
(2)開削工法に対する優位性
a.騒音・振動の削減
掘削機械を使用する必要性が無いことから大型重機の搬入が不要であり、また、管きょ更生工事に使用される機器には、消音装置等が施されていることから、建設公害の発生が少ない。
b.交通への影響の削減
市街地内の地下埋設物の輻輳する道路幅員が狭小な道路でも、開口部が既設マンホールのみであることから、道路占有面積が少なく、地域住民の日常生活や商業、生活活動に支障をきたすことが少なく、交通対策上、有利である。
c.工期の短縮
1スパンをおよそ1日~数日で施工完了となることから、大幅な工期短縮となり、日常生活の支障が少なくて済む。
d.コストの削減
掘削を伴わないことから、地下埋設物の切り回し、移設等の工事、その他の補償が不要であり、また、土被りが深い場合には、アスファルト舗装ガラや掘削発生土量がないことから、コスト削減に貢献できる。
e.建設廃棄物の削減
掘削を伴わないことから、アスファルト舗装の取り壊し等が不要であり、舗装ガラ等の発生がないことから、建設産業廃棄物の削減となり、道路を掘らない技術として環境に優しい建設施工を実現することができる。
管渠更生工法の分類
現在一般的に国内で用いられている更生工法は、更生管の形成方法により分類されています。
これを簡単に図示しますと、下記のような分類になります。
■管の種類
自 立 管:
既設管の強度を期待せず、自らで外力に抵抗するものとし、新管と同等以上の耐荷能力および耐久性を有するもの。(反転・形成工法が適用)
二層構造管:
既設管が残存強度を有し、更生管と二層構造で外力を分担するために構築されるもの。(反転・形成工法が適用)
単 独 管:
自立管や二層構造管を、「既設管と一体構造とならない更生管」の総称として用いる。(反転・形成工法が適用)
複 合 管:
既設管とその内側の更生材が充填材により一体構造となって外力に抵抗するものとし、新管と同等以上の耐荷能力および耐久性を有するもの。(製管工法が適用)。
■工法について
(1)反転工法
熱または光等で硬化する樹脂を含浸させた材料を、既設のマンホールから既設管内に加圧反転させながら挿入し、既設管内で加圧状態のまま樹脂が硬化することで管を構築するものです。反転挿入には、水圧や空気圧等によるものがあり、硬化方法も温水、蒸気、光等があります。
但し、目地ズレやたるみ等を改善させるのではなく、あくまでも既設管の形状を維持する断面を更生することになります。
(2)形成工法
熱または光等で硬化する樹脂を含浸させた材料や、熱可塑性樹脂の連続パイプを既設管内に引込み、水圧または蒸気圧等で拡張・圧着させた後に硬化することで管を構築するものです。形成工法には、更生材を既設管内径まで加圧拡張したまま温水、蒸気、光等で圧着硬化する工法、または加圧拡張したまま冷却固化する工法があります。
但し、目地ズレ、たるみ等を改善させるのではなく、あくまでも既設管の形状を維持する断面を更生することになります。
(3)製管工法
既設管内に硬質塩化ビニル材等を嵌合させながら製管し、既設管との間隙にモルタル等を充填することで管を構築するものです。また、流下量が少量であれば下水を流下させながら施工することも可能です。
多少の目地ズレ等は、更生管径がサイズダウンすることにより解消できますが、不陸、蛇行がある場合には、原則として既設管の形状どおりに更生されることになります。
(4)鞘管工法
既設管内径より小さな外径で製作された管きょ(新管)を推進もしくは搬送組み立てにより既設管内に敷設し、隙間に充填材を注入することで管を構築するものです。更生管が工場製品のため、仕上がり後の信頼性は高いものとなります。
断面形状が維持されており、物理的に管きょが挿入できる程度の破損であれば更生可能となります。